それぞれに

以前にも書かせていただいた、NHK「ドキュメン

ト72時間」。

たまたま観たのがきっかけですが、初めて拝見した

時は立ち食いの串揚げ店での72時間でしたが、同

じお店に集う人達の中にも様々な人間模様がありま

した。

 

先月放送された神奈川県の24時間営業のガソリン

スタンドでの3日間は、とても印象に残る内容とな

ました。

 

降りしきる雨の中、人々の思いを乗せて走る車にはそれぞれに理由があり、ご自身の結婚式の打ち合わせに向かう人、恋人に会いに行く人、アイドルの投票に向かう人など様々ですが、撮影1日目にインタビューした71歳の男性は、ご自分で作った竹とんぼなどをフリーマーケットで出展するためにこれから数時間かけて向かうという。「この雨の中ですか?」との問いに「約束したからね」と答え、電気店を経営していたそうですが、大型店の出店により4年前に失業されたそう。

 

撮影3日目にもまたスタンドにいらっしゃり、スタッフをみかけたその男性はすぐにかぶっていた帽子を脱いで挨拶をし、そばにいらした奥さんに「NHKさんだよ」と穏やかな口調で伝え「先日の売り上げは?」の問いに「3千円です」との答えでしたが、「生きていくというのはどういうことだと思いますか?」の問いには「必死だろうね。悪い事はしてはいけないので。その中でうまくやっていくしかない。だから必死だよね」との言葉には、これまで実直に生きてきたであろう男性の生き方がみえてくるものでした。

 

深夜に立ち寄った別の男性は仕事帰りとのこと。聞くとお子さんが4名おり、昼夜掛け持ちで働いているという。

 

別の車を運転する女性の車の後部座席には、ご主人さまとお子さんが。ご主人さまは数年前に交通事故にあい、言葉がうまく伝えられなくなり、働くことが困難となり、今は奥さまがパートで支えており、この日はそういった家族の方の集まりがあったそうですが、一時は助からないという覚悟をしたそうで「こうして居てくれるので、大丈夫です」と静かな微笑みで立ち去りました。

 

また別の車を運転する45歳の女性は、高校生になる娘さんのハンドボールの試合に向かうという。試合には出場しない娘さんですが、「母は、ちゃんとみているよ」とアピールするためとの

こと。まだ小さかった娘さん一人を連れて離婚をし、その数年後にお姉さんもお子さんを二人連れて離婚。その後お姉さんは心の病でこの世を去り、気付いてあげることができなかったといい、お姉さんの娘さん二人をひきとり、「三人娘がいます」と携帯の画面を見せ、普段は仕事が忙しく、中々一緒にいられる時間がないけれど、「母は、ちゃんとみている」と伝えたいとのこと。もしも同じ立場だったなら、同じようにできたのだろうかと考えますが、同じ選択をしたとしても、その女性のように現実を受け入れながら冷静に突き進み、穏やかにその事実を伝える余裕など、私には到底ないものと思います。

 

害虫駆除をお仕事とする43歳の男性は、最近独立をしたため、まだまだ仕事は少ないそうですが、手探りで一生懸命おこなっているとのことで、随分前に奥さまを突然病気で亡くされており、お子さんとの時間を作る為に独立したそうです。「夢は?」との問いに「夢は無いです。子供を育て上げてから、夢はそのあとに考えます」と。

 

翌週放送された釣堀店では、中学の同級生という20代前半の4人組の男性。彼らは中学卒業後、仕事に就いたそうですが「学校に進みたくはなかったですか?」の問いに一人の青年が、「行きたかったです。夢があったので」と答え、「学校へ進み、車関係の仕事に就きたかった」と言い、隣にいた友人が「へぇ~知らなかった」と驚いていましたが、「今その夢は?」との問いに「もうそれは無いです。足場の仕事一本で行こうと決めたから」と答え、すると先ほどの隣の友人が「おれはあるよ。保育士になる夢。勉強もしなければならないし、費用もかかり時間もかかって簡単ではないけれど、でもやるよ」と言う友人の話を彼は穏やかな笑顔で聞いていましたが、どちらが正しいというものではなく、夢に向かって突き進むもよし、また持っていた夢とは違う今のお仕事一本でやって行くと決めるのもまた一つの選択であり、いずれにしてもまだまだお若い彼らの未来は多くの可能性を秘めており、思わず「頑張れ!!」とエールを。

 

深夜ガソリンを入れ、24時間営業のカラオケBOXに向かうという若い男女は、とても楽しそうな笑顔をみせてくれました。しかないその瞬間を存分に楽しみながら過ごす。それもまた大切な時間であり、いつしか懐かしく、輝く想い出となるのでしょうね✧